2013年10月30日水曜日

細胞診のリスク、人でも手術前提に行う

私も最初は細胞診を考えました。
無麻酔で手軽にでき費用も比較的安価で良悪の判断ができると思ってたからです。
しかし実際はどうかというと・・・

たしかに手馴れた先生であればミスなく出来るのかもしれません。
しかし人の場合の細胞診でも基本的に近いうちに手術することを前提にするそうです。
なぜならば、悪性だった場合、その細胞を散らしてる可能性が大きいからだそうです。
散らさず完璧に採取することは難儀らしい。故に散らしてしまう事を前提に進めていきます。
メラノーマの場合は確実に散るらしい。

では動物の場合はどうだろうか?
確かに安心を得るのには気軽にできる検査だと思う。
しかしそれよりもリスクの方が大きいような気がします。
もちろんすぐに手術するんだという前提でするには問題ありませんがその先生の手術の日程は大丈夫ですか?数日以内、もしくは1週間以内にやってくれますか?
日程が詰まって1ヶ月後とか言われたらやらないほうがいいです。

あるお店ではこの手の相談も多いそうです。
細胞診後に体に異変が起きたと・・・

なので「やる」としても手軽さだけではなくしっかりとリスクを説明してくれて、悪性の場合は数日いないにでも手術してくれる先生の下で行った方がいいです。

この針で突き破らずに確実に芯を捉えて悪い細胞だけ採取するのは難しい・・・と獣医師本人が言っておりました。もちろんこういった事に慣れてないからかもしれませんが手馴れている先生がいるとも思えません。

ここもやはり信頼関係なのだろうが、このようなリスクも飼い主がしっかりと把握しておかなければ行けません。

乳腺腫瘍と細胞診

細胞診・・・
しこり(腫瘤)に対して小さな針で細胞の一部を取りその性格を見るものである。
 
細胞診は得られる情報は少なく、それでなにもわからない腫瘍もあります。
ただ、細胞診で確定がつく腫瘍もいくつかあります。
良性の脂肪腫なら手術をしなくてもいいし、する場合でもかなり簡単に切除できます。
皮膚で最も多い悪性腫瘍の肥満細胞腫も確定がつきます。
乳腺腫瘍は、細胞診ではわかりにくい腫瘍ですが、悪性のものほど判断は出来ます。
肉腫というものなら、細胞診ではほとんど細胞は取れません。
ただ逆に取れないという所見は肉腫を疑う特徴であり、
また肉腫を切除する場合は、広範囲切除となるため、次の検査の必要が出ます。


細胞診である程度のことがわからない場合、
Tru-cut生検などのコア生検というものが必要か判断します。
これは無麻酔で、しこりの一部の塊を採取する検査です。
これでほとんどの腫瘍の名前を診断できます。
 



 
 
 

乳腺腫瘍か腫瘤か・・・まずは信頼できる獣医選び

乳腺腫瘤(腫瘍ではなく"しこり")は基本的に触診でわかるそうです。
当然しこりの有無の判断だけなので、触知できれば"ある"ということです。
ただし、その腫瘤が腫瘍か過形成や炎症か、はたまた腫瘍だった場合に良性か悪性かは、触診だけではわかりません。「しこり」があるからといってすべてが乳がんであるというわけではありません。
実際、乳腺の「しこり」の約80%はがんではないそうです。


触診では、腫瘤の数、個々の大きさ、硬さ、乳腺腫瘤であれば一側か両側か、底部に固着していないか、自壊していないかなどである程度良性か悪性かを頭の中で予想し、可能性を飼い主さんに伝えることが基本。(あくまで可能性で必ず当たるわけではありません)。
触った感じである程度の「しこり」の感触の違いがわかる場合もあります。
  • 良性は「消しゴムのような」硬さ、悪性は弾力のある「石のような」硬さ。
  • 良性は周りとの境界がはっきりしている感じで、悪性は周りとの境界は比較的曖昧。
  • 良性は指で押すと動き逃げるが、悪性は指で押してもその場所から動かない。


一般的に腫瘤を発見し腫瘍を疑う場合には、細胞診(細い注射針で細胞を採取し顕微鏡で細胞を観察する。麻酔はいりません。)を行っているのが今のやり方。
ただ細胞診では、乳腺腫瘤の場合には、ある程度の目安にはなりますが、腫瘍の良性・悪性を診断することは困難で、仮診断にしかならない。
 
人間の場合、マンモグラフィーなど検査技術が発達していますが、獣医療での術前検査は触診・細胞診(仮診断にしかならないので相談次第で実施しないことも)・必要に応じてCT検査などにとどまります。
結局のところ、腫瘤を切除し、病理組織学的検査を実施しないと腫瘤の確定診断はできないため、動物病院では腫瘤を見つけたら切除を提案します。
 
ただし、明らかに悪性で肺やリンパ節への転移が認められる場合には手術は提案しません。腫瘤をとっても余命は変わらないからです(転移があっても腫瘤の自壊によりQOLが下がっている場合は、QOLの維持を目的に切除することもあります)。
また、悪性の中でも"炎症性乳がん"であった場合には、周囲組織が炎症により正常でなく、最悪縫合部の皮膚がくっつかない場合があるため、手不適応となります。(相談次第で行う場合もありますが、くっつかない可能性をきちんと飼い主さんに説明しなければなりません。)
 
この時に避妊手術を、一応提案。
メリットは腫瘤切除自体が全身麻酔をかけての手術になるため同時に行えること、乳腺腫瘤がホルモン依存性の可能性があることから。
 
乳腺すべてをとってしまえば乳腺腫瘤の新たな発生は心配ありませんが、残っている場合には新たに出る可能性があるためです。(良性や過形成など。悪性は高齢で避妊しても発症率は変わらない。)
加えて高齢の子の場合、今後卵巣子宮疾患の懸念があるためです。手術が必要でも体力がなくなって全身麻酔による手術に耐えられないという症例を目にしているため、獣医師としては今のうちにと考えます。
 
ただし、乳腺腫瘤は皮下組織の剥離・切除と比較的侵襲が低いですが、卵巣子宮摘出は腹腔内へのアプローチとなるため、さらに侵襲が大きくなるため、その点も十分説明する必要があります。
手術をしっかりできる獣医はたくさんいます。でも、できない獣医もたくさんいます。
「判断するのは飼い主さんです」。
 
信用できる獣医を見つけましょう。
 

2013年5月2日木曜日

犬の乳腺腫瘍 発症率

『犬 お腹 しこり』とか『犬 乳首 しこり』と検索すると必ず出てくるのが「乳腺腫瘍」ですね。
ほぼ間違いなく乳腺腫瘍がダントツに出てきます。
また動物病院でも「乳腺腫瘍」と診断されたケースの書き込みも多い。
なので『犬 お腹 しこり』とか『犬 乳首 しこり』=乳腺腫瘍と思っている人が大多数です。
そこで犬が乳腺腫瘍の発生率がどれくらいなのか調べてみました。
一般社団法人 日本臨床獣医学フォーラムの中に「犬の病気」というコンテンツがあるのですがこの中に乳腺腫瘍の発生確率が出ています。
犬の腫瘍で圧倒的に多いのは乳腺腫瘍である・・・と始まりますがその次に
犬の乳腺腫瘍の発生頻度は10万頭につき198.8頭』とあります。
0.1988%・・・約0.2%です。
およそ1000頭当たり2頭の確率です。

でよく言われているのがある臓器を摘出する予防=避妊手術です。
最初の発情までに避妊手術を受ければ乳腺腫瘍の発生は非常に少なくなるといわれている
(危険度はふつうの犬の1/50にも下がる)=約0.004%
10万頭当たり4頭の確率。
また最初の発情をむかえても,2回目の発情をむかえるまでに手術を受ければ減らせる
(危険度はふつうの犬の1/3以下に下がる)=約0.07%。1万頭当たり7頭。
とあります。確かに格段と発症率は下がります。

確率論だけでは言い切れないものなのでしょうが、
確率から言えば乳腺腫瘍の発生確率は約0.2%であり
比較的発生率の低いものだと言えるのではないでしょうか?

ちなみに・・・
近年における動物用狂犬病ワクチンの
副作用の発生状況調査
蒲生恒一郎↑ 小川孝衛藤真理子
農林水産省動物医薬品検査所(干185-8511 国分寺市戸倉1-15-1)
(2007年4月18日受付・2007年12月11日受理)
要約」:ていうのを見つけました。
http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010761708.pdf
動物用狂犬病ワクチンの副作用の発生状況
年齢層別の副作用および死に至った副作用の発現率

1歳未満


1~3歳


4~6歳


7~9歳


10~12歳


13歳以上


不明

副作用発現数
(発現率)
10
(1.46)
18
(0.64)
7
(0.31)
11
(0.55)
9
(0.93)
4
(0.37)
1
(0.37)
死に至る副作用発現数
(発現率)
5
(0.73)
6
(0.21)
5
(0.22)
6
(0.31)
9
(0.84)
1
(0.09)
0
(0.00)

検体数は少ないもののよっぽどこちらのほうが高い数値になりますね(^^;
逆に言えば少ないにも関わらずです。


犬の乳腺腫瘍は犬の腫瘍で圧倒的に多い。
初期に避妊をすればほぼ防げる。
初期段階でなくとも避妊をすればリスクを軽減できる。
良性悪性の割合はほぼ半々。

としか書かれてない事が多いがもともとの発症率を載せないのは偶然かそれとも意図的なのかわからないが少々ずるいと思う。これでは飼い主を怖がらせるだけである。
かと言って素人である私たち飼い主が判断もできない。
ここらへんが難しいところである。