2013年10月30日水曜日

乳腺腫瘍か腫瘤か・・・まずは信頼できる獣医選び

乳腺腫瘤(腫瘍ではなく"しこり")は基本的に触診でわかるそうです。
当然しこりの有無の判断だけなので、触知できれば"ある"ということです。
ただし、その腫瘤が腫瘍か過形成や炎症か、はたまた腫瘍だった場合に良性か悪性かは、触診だけではわかりません。「しこり」があるからといってすべてが乳がんであるというわけではありません。
実際、乳腺の「しこり」の約80%はがんではないそうです。


触診では、腫瘤の数、個々の大きさ、硬さ、乳腺腫瘤であれば一側か両側か、底部に固着していないか、自壊していないかなどである程度良性か悪性かを頭の中で予想し、可能性を飼い主さんに伝えることが基本。(あくまで可能性で必ず当たるわけではありません)。
触った感じである程度の「しこり」の感触の違いがわかる場合もあります。
  • 良性は「消しゴムのような」硬さ、悪性は弾力のある「石のような」硬さ。
  • 良性は周りとの境界がはっきりしている感じで、悪性は周りとの境界は比較的曖昧。
  • 良性は指で押すと動き逃げるが、悪性は指で押してもその場所から動かない。


一般的に腫瘤を発見し腫瘍を疑う場合には、細胞診(細い注射針で細胞を採取し顕微鏡で細胞を観察する。麻酔はいりません。)を行っているのが今のやり方。
ただ細胞診では、乳腺腫瘤の場合には、ある程度の目安にはなりますが、腫瘍の良性・悪性を診断することは困難で、仮診断にしかならない。
 
人間の場合、マンモグラフィーなど検査技術が発達していますが、獣医療での術前検査は触診・細胞診(仮診断にしかならないので相談次第で実施しないことも)・必要に応じてCT検査などにとどまります。
結局のところ、腫瘤を切除し、病理組織学的検査を実施しないと腫瘤の確定診断はできないため、動物病院では腫瘤を見つけたら切除を提案します。
 
ただし、明らかに悪性で肺やリンパ節への転移が認められる場合には手術は提案しません。腫瘤をとっても余命は変わらないからです(転移があっても腫瘤の自壊によりQOLが下がっている場合は、QOLの維持を目的に切除することもあります)。
また、悪性の中でも"炎症性乳がん"であった場合には、周囲組織が炎症により正常でなく、最悪縫合部の皮膚がくっつかない場合があるため、手不適応となります。(相談次第で行う場合もありますが、くっつかない可能性をきちんと飼い主さんに説明しなければなりません。)
 
この時に避妊手術を、一応提案。
メリットは腫瘤切除自体が全身麻酔をかけての手術になるため同時に行えること、乳腺腫瘤がホルモン依存性の可能性があることから。
 
乳腺すべてをとってしまえば乳腺腫瘤の新たな発生は心配ありませんが、残っている場合には新たに出る可能性があるためです。(良性や過形成など。悪性は高齢で避妊しても発症率は変わらない。)
加えて高齢の子の場合、今後卵巣子宮疾患の懸念があるためです。手術が必要でも体力がなくなって全身麻酔による手術に耐えられないという症例を目にしているため、獣医師としては今のうちにと考えます。
 
ただし、乳腺腫瘤は皮下組織の剥離・切除と比較的侵襲が低いですが、卵巣子宮摘出は腹腔内へのアプローチとなるため、さらに侵襲が大きくなるため、その点も十分説明する必要があります。
手術をしっかりできる獣医はたくさんいます。でも、できない獣医もたくさんいます。
「判断するのは飼い主さんです」。
 
信用できる獣医を見つけましょう。
 

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